アレルギー疾患
30年ほど前の話ですが、日本小児アレルギー学会に参加した時に、先輩に誘われて、当時は異端視されていた「食物アレルギー懇話会」に参加し、当時の除去食療法のあり方に衝撃を受けてからでした。
治療法については、知見の積み重ねにより、大きな変遷を経て今に至っており、今正しいといわれている事も今後も変わってくる可能性もあります。現在は、現時点での知見の集大成で、関連学会で各疾患の治療管理ガイドラインを作成しており、概ねこれらに準じた治療管理をしていくように心がけています。
最近の話題として2つほど。
1) 食物アレルギー対応策
保育園、幼稚園、小中学校において、特に食物アレルギーに対する対策が求められるようになって参りました。
正しい対応をしていただくためのガイドラインも作成されてはいますが、それを正しく理解するのも困難で、現場も困惑しておられる様子です。
今後出来るだけスムースに運用していけるように、粕屋小児科医会、粕屋医師会とともに理解を深めていく努力をしていきます。
2) スギ花粉エキス舌下免疫療法開始
平成26年秋からスギ花粉症について「舌下免疫療法」という将来根治も望みうる治療法が保険診療で行なえるようになりました。
当クリニックでも、適応年令が12才以上という制約がありますが、今秋から治療をスタートしております。
毎年ひどいスギ花粉症の症状にお悩みの方、とりわけ高校、大学受験を控えている受験生など、かなりの症状改善が期待できると思われます。
近隣の医療機関で開始されたところもあまり多くないようなので、根気のいる治療ですが、もしご希望があれば成人の方も受け付けております。ご相談下さい。なお、近いうちにダニ抗原による舌下免疫療法も開始される見通しです。これも12才以上が対象になりそうですが、当クリニックでも取り組む予定です。
アトピー性皮膚炎
痒みを伴う湿疹(皮膚炎)を繰返す慢性のアレルギー疾患で、その多くは乳児期早期から幼小児期におこります。赤ちゃんの健康相談では一番多い問題の一つです。
原因については遺伝的要因とともに食物アレルギーについて語られる事が多く、皆さんの心配もそこに集まりがちです。確かにとても大事な視点であります。食生活の変化がアレルギー疾患を増やしたと盛んに言われ、特に妊娠中授乳期のお母さん方の心配の種です。
当クリニックでは、お子様の皮膚の状態と症状の経過を伺って、必要があれば血液検査、皮膚テスト(プリックテスト)など行った上でお子様の状態に応じた治療を提案します。
診療については、今まで試行錯誤を繰返してきましたが、皮膚の手当については、スキンケア、早くきれいにして皮膚のバリア機能を取り戻すこと、いわゆるプロアクティブ治療がとても重要だと考え、今では九州大学皮膚科古江増隆教授が代表を務められる、厚生労働科学研究「アトピー性皮膚炎の発症・症状の制御および治療法の確立普及に関する研究」(2011-2013年度)の成果をまとめたウェブサイト「アトピー性皮膚炎について一緒に考えましょう」を皆様にご紹介して、それぞれの方の状態にあった治療のしかたをご提案しています。
食物アレルギー
食物アレルギーの関与のしかたも様々です。食べてすぐ皮膚が真っ赤になったりじんましんが出たりひどい痒みが出たりするようなら、それはおそらく即時型アレルギー反応であり、ひどければアナフィラキシーにつながる心配なことです。一方、食べてしばらくして、翌日とかに皮膚が赤くなったりジクジクカサカサになったりする場合、食べ物の影響が強く疑われます。この場合、血液検査では分らないこともあります。現象の観察がとても重要です。観察の様子をお伝え下さい。以後の診療に役立ちます。
症状と諸検査の状態によって、食物の除去をしていただいたり、摂取できる範囲についてご相談の上決めたりします。ひどい症状が出そうにないと判断したら、実際に食物を負荷して安全性を確かめたりもしています。
必要最小限の制限でストレスの少ない生活が送れるようにお手伝いしたいと考えています。
特に即時型の食物アレルギーがある場合、最近は保育園、幼稚園、小中学校に入るに際して、細かく症状を聞かれたり、医療機関からの診断書提出を求められたりするようになりました。それだけアレルギー疾患についての関心が高まり注意が行き届くようになってきたのですが、まだ充分に理解されていない部分も多く、正しい対応ができていくようにしていく必要があります。
厚生労働省、文部科学省からそれぞれ「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」、「学校のアレルギー疾患に対する取組みガイドライン」が示されて、食物アレルギーのみならず、詳細に記載されています。私達もこれらのガイドラインに沿った指導を心がけております。両者ともかなり大部ではありますが、皆様も目を通されては如何でしょうか。舌下免疫療法分らないところがあれば詳しくご説明致します。
気管支喘息
知見の積み重ねにより、気管支喘息の病態については詳しく解明されてきております。症状の強さ、発作を繰返す頻度によってどのくらいの治療をすべきかなど、診断治療管理については日本アレルギー学会等から詳しい治療管理ガイドラインが示されており、このような指標に従って治療の提案をさせていただいております。
大事なことは、喘息のために日常生活が制限されないこと。永続的に続く肺機能の異常が起らないように次の発作を起こさないような治療をしていくこと。そのためには風邪の治療とは違い、落ち着いた後もしばらく治療を続けることが大事です。場合によっては数ヶ月、あるいは年単位で治療を続けていただくこともあります。
その喘息のコントロールの状態を判断する指標となる検査の一つが、吐き出す息に含まれる一酸化窒素(NO)濃度測定です。NOはアレルギーの炎症が起きると特異的に高値となリ、喘息の活動性の指標、他疾患との鑑別などに役立ちます。呼気中NOを簡便に測定できる機器を備え、役立てております。治療をいつまで続けるか判断する上にも有用です。
アレルギー性鼻炎・アレルギー性結膜炎
アレルギー性鼻炎・結膜炎そのものの治療は耳鼻咽喉科・眼科の先生にお願いすることになりますが、これらは気管支喘息との合併がとても多く、一体化した治療が必要になることが多いのです。各科の先生方と協力して治療に当たります。
前述しましたが、最近スギ花粉症に対する舌下免疫療法ができるようになり、当クリニックでもこの秋から開始しております。主要なターゲットはアレルギー性鼻炎ですが、目も鼻も皮膚も一度に悪くなるため、当クリニックを受診される方も少なくありません。まだ年令制限12才以上ということになっていますが、将来的にはもう少し低年齢まで適応が広げられる見通しです。
ダニアレルゲン舌下錠による舌下免疫療法開始
詳細については、発売元の鳥居薬品のサイト「 免疫療法ナビ」に詳しく記載されていますので、ぜひご覧になってください。パンフレットも用意しておりますので、当クリニックでもお渡しできます。
期待できる効果としては、鼻炎の症状改善のほか、目の症状の改善、そして、喘息症状の改善も期待できるようです。また、治療薬の使用を減らすこと、毎日の生活の質(QOL)の改善も期待できます。数年はかかる辛抱のいる治療法ですが、全員がとは言えませんが、かなり楽に生活ができる程度には回復が望めると思われます。
対象は当面満12歳以上の方になります。小児科関係では主に中学生ということになりますが、ご希望があれば、成人の方もお受けいたします。スギとは違い、開始時期は症状のひどくない時であればいつでも結構です。毎日辛い症状の方はどうぞご相談ください。
嘔吐下痢症と経口補水液
嘔吐下痢症(はきくだし)は経口補液で治そう!
嘔吐下痢症とは
こどもはたびたび嘔吐下痢症にかかります。冬の時期には主にノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなど、夏には主にエンテロウイルス属などの感染でうつる病気です。更にはカンピロバクター、サルモネラ菌などの細菌による病気も同じような症状になります。
治療の基本
原因は何であれ、嘔吐下痢で失った水、電解質の補給をしておけば、基本的には自然に治る病気です。ひどい場合は点滴や入院が必要なこともありますが、ほとんどは口からの水分補給(経口補液)で改善します。
家庭での治療
1)経口補液のしかた
※吐き気が少し落ち着いたら、適当な電解質を含んだ水分を少しずつ飲ませましょう。
※経口補水液(OS-1、アクアライトORSなど)、などがベターですが、母乳、ミルク(薄めなくてよい)、野菜を煮だしたスープでもOK。いわゆるスポーツドリンク、お湯、お茶などは電解質不足です。果汁は逆に過剰で、糖質も過剰です。とはいえ、食欲もなくなっている時ですから、まずは本人の飲みたがるものでも仕方ないでしょう。
※飲ませるスピードは体重1kgあたり1時間10〜30mlくらいです。3〜4時間続ければ元気回復します。
2)食べるものは?
従来何を食べるかは便と相談、つまり便と同じ程度の固さのものを、と言われていましたが、むしろ食欲と相談でしょう。最近は普段と変わりない食事内容でかまわないと言われています。これまた少しずつ、少しずつです。
臍ヘルニア(でべそ)
『でべそは1才過ぎれば自然に治るから何もしなくていい。』というのが今までの通説でした。
実際、 1才まで80%、2才まで90%が自然に治ります。治るのに平均9ヶ月くらいかかると言われています。だから2才以後も自然治癒しない場合、手術の適応と考えられていました。
しかし、中にはテニスボールくらいまで大きくなるものもあり、何もせずにみているのが心配だったり、治った後も余剰な皮膚が残り、外観上の問題を残すことがありました。
近年、主に小児外科の方から、 手術せずに早くきれいに治すための治療法が提案され、効果を上げています。
従来、でべその部位に硬貨を貼り付けてテープで押さえたりするような治療法については、皮膚をかぶれさせるだけで効果がありませんでした。
そこで、でべその部分をしっかりおなかの中に押し戻し、肌に優しいテープで覆ってしまう治療法が行われています。皮膚のかぶれは多少なりともありますが、 治るまでの期間が平均2ヶ月余りと大幅に短縮され、治った外観もずいぶんよくなります。
まだ一定のやり方にはなっていませんが、その中で良さそうなやり方を見習って治療してみることを提案しています。
ここ数年経験し、「早くきれいに」治ることは実感できています。
治療開始は生後1〜2ヶ月のなるべく早い方がいいですが、いつの時期でも可能です。 でべそのサイズが2cm以上くらいあれば治療の適応となります。
ご希望の方は院長、スタッフにご相談下さい。
身体発育についての心配
身体発育についてご心配はありませんか?
乳幼児期から小中学校のお子様まで、よその子に比べて小柄みたい、順調に発育しているかどうか心配、逆に肥満気味で心配、やせが心配、などがある時、役立てていただける「成長曲線作成表計算ファイル(クリックするとダウンロード可能)」という便利なツールがあります。このファイルをダウンロードしてください。
お子様の生年月日、ご両親の身長、過去に測定した身長体重と年月日等、必要事項を入力するだけでお子様の発育状況がいろいろなグラフとなって表示されます。
学校の身体計測等で受診を勧められた方は、ご相談においでになる前に、前もってデータを入力してご持参いただくととても役立ちます。
タミフルは異常行動が特に多い
インフルエンザの治療について皆様はどう考えられますか?
(2017-11-27号)
インフルエンザの治療用の薬剤はノイラミニダーゼ阻害剤と呼ばれます。主に、タミフル(内服5日間)、リレンザ(吸入5日間)、イナビル(吸入1回)が主に用いられています。これらを使用した子らが「異常行動」を起こしたとの報告があとを絶たないため、厚生労働省は、「部屋に鍵をかける」などの対策を呼びかけるという方針を決めたとが報道されています。
厚生労働省の報告http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000183979.html では、これらの薬剤使用後に、「急に走り出した」「部屋から飛び出そうとした」といった異常行動を起こしたとの報告が、昨シーズン(2016/17年)に54件ありました。厚生労働省は、いずれも因果関係は不明としていますが、その多くは、医師が何らかの関連を認めて報告したものです。ですから、「因果関係は不明」とは、本当は言えないのです。
一方、厚労省はこれまで、「薬を飲んだあとの2日間は子どもを1人にしない」よう呼びかけていましたが、こうした異常行動の報告があとを絶たないことから、新たな通知を出す方針を決めたと報道されています。
新たな通知には、「部屋に鍵をかける」「飛び出しや飛び降りを引き起こす環境に子どもを置かない」といった具体的な対策を呼びかけることが盛り込まれる予定とのことです。
54件の内訳は、タミフルが38件、リレンザ11件、イナビル5件でした。10歳未満、10代、20歳以上で分けると、タミフル(19,1,18)、リレンザ(1,10,0)、イナビル(0,5,0)でした。服用推定数はタミフル313万人、リレンザ197万人、イナビル475万人でした。
厚労省のサイトhttp://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000183976.pdfには、年齢別にも服用者数が出ているので、年齢別に調整して、タミフルと非タミフルで異常行動の起こりやすさを求めました。
すると、タミフルが15.8倍(95%信頼区間:5.7, 43.8、p<0.0001)と、タミフルで著しく異常行動が起こりやすいということが分かります。
タミフルでもタミフル以外でも、100万人中の異常行動の報告割合は10代が最も高いのですが(図1a)、タミフル以外と比較した倍率(オッズ比:図1b)でみると、10歳未満や20歳以上の方が大きい。
10代で倍率が小さかった理由として最も考えられるのは、10代にはタミフルは「原則として禁止」だという点です。10代にタミフルを処方して、異常行動が起こった場合、医師は報告しにくいはずですから、他の年齢層と異なるのは、そのためでしょう。
異常行動後に事故死亡した例が、昨シーズンは2人いました。リレンザ使用後が1人、イナビル使用後が1人でした。従来は、全報告に占める異常行動後の死亡例は、タミフルでは30人いましたが、リレンザでは0でした。全報告に占める異常行動後の死亡の報告オッズ比は、41.39 (95%CI: 2.53, 677.9, p<0.0001)という高い値を示していましたので、リレンザで1人増えたとしても、この傾向には変化はありません。むしろ、10代で異常行動後の死亡例が多いので、これも、仮に起こっていたとしても、報告されないという恐れが大きいでしょう。原則禁忌で使って死亡すれば、医療過誤訴訟にもなりかねないのですから。
もう一つは、厚労省は、公表に際して、選別している可能性があります。他の分析結果では、2004年以降は、選別して公表していると考えられるからです。しかも、重症例ほど公表が少ない可能性があります。
したがって、タミフルでは、どの年齢でも、異常行動を極端に起こしやすく、しかも死亡につながる例が多いと言えます。
日本では、インフルエンザに罹ると、たいていの人は受診します。検査を受け、タミフルなどノイラミニダーゼ阻害剤が処方されています。欧米ではどうでしょうか。
欧米では、インフルエンザは、自然に治癒する軽い感染症なので、基本的には、「薬剤は不要」とされています。日本のように、誰もが医者にかかって、検査を受け、タミフルやリレンザなどのノイラミニダーゼ阻害剤の処方を受けるということはありません。
図2に、人口1000人あたりの抗インフルエンザウイルス剤の使用頻度を示しました。ヨーロッパでは、比較的処方の多いフランスでも、人口あたり、日本の50分の1、スウェーデンやデンマークは日本の300分の1、イタリアは1000分の1、英国では日本の1200分の1しかタミフルやリレンザを使っていません。イナビルは欧米では承認もされていません。
WHOは、2017年6月の改訂で、タミフルを必須薬剤の主要リストから外す措置をとり、次回の改訂では、削除を示唆しています。
現在、英国やWHOでも、インフルエンザで重症化のおそれのある糖尿病合併者や高齢者、腎障害など、ハイリスクと言われる人にのみ、推奨しています。しかし、私も参加して検討したコクランのノイラミニダーゼ阻害剤チームの検討結果http://www.npojip.org/sokuho/140410.html では、タミフルは、糖尿病や腎障害、精神症状、頭痛を起こしやすく、ハイリスクの人には、かえって危険であると考えられました。
結局、当センターで以前から主張してきているように、タミフルなどノイラミニダーゼ阻害剤は、健康な人には不要であり、ハイリスクの人には逆に危険でさえある、ということになり、使い道のない「もの」でしかない、というのが結論です。
その理由について、詳しくは、http://www.npojip.org/sokuho/160726.htmlをご覧ください。
なお、リレンザやイナビル服用後に異常行動、特に死亡するような事故を起こす場合、抗ヒスタミン剤や、咳止め、ある種の抗生物質、抗アレルギー剤などの成分が関係していることが多く、それがリレンザやイナビルによる異常行動と報告されていることがしばしばあります。
抗ヒスタミン剤や咳止め、抗生物質などもインフルエンザには無効ですので、きつい解熱剤(非ステロイド抗炎症剤)を含めて、インフルエンザには、十分な睡眠と休養が最も大切であることを、今一度見直してください。
WHOによるタミフルの格下げは、速報No175を参照ください。
http://www.npojip.org/sokuho/170726.html
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